縄文時代の文明のまま鎖国している夫の話
夫に届く夫婦宛てのメッセージの9割が、夫で止まる。
始発、夫。
終点、夫。
上飯田線ばりの短さ。
常にLINEの会話を報告してくれる必要など全くない。
問題は、御礼や御返しが必要な物事に関してである。
夫止まりということは夫がその話題を忘れた瞬間が世界の終焉。
私にバトンが回ってくることもなく体育祭は終了する。
私がクラウチングスタートで準備している最中、
夫はクラスメイトと打ち上げをしているのだ。
同級生ならまだいい。
だがもはや現状は、『連絡票もプリントも見せない息子のおかげで、授業参観も提出物もフルシカトかます印象の悪い母ちゃん』という、親子の攻防に等しい。
「あんた、先月保護者会あったんじゃないの!」
そんな喧嘩が3ヶ月に一度の恒例行事と化している。
私達は親子ではなく夫婦だ。
かーちゃんは許してくれたかもしれないが、
それが嫁にも通用するなどと甘いことを考えないでほしいものだ。
まあ、そんな上記の理由もあり、我が家は3ヶ月に一回、本人の了承を得てメッセージチェックを行うのである。
その際、必ず二、三通は既読スルーをかましている重要なメッセージがあり、夫を問い詰めると「読んだまま忘れてた…」とのたまうので怒るのもめんどくさい。あーもう死ぬ程めんどくさい。明日地球の中身がカスタードクリームとかになってねーかな。雲はわたあめ。あ〜〜〜。
こんなの、メロスも激怒する。
セリヌンティウスだってきっと私のこと励ましてくれるし、
なんならセリーヌディオンも横で歌ってくれる。
別にね。
誕生日にサプライズしてほしいとかね。
一度くらいはデートのプランを考えて欲しいとか、そんなこと言ってないのね。
ディナーは夜景の見えるレストランじゃなきゃ嫌とか、5万のアウター欲しいとかね。
そんな要求一切してないわけですよ。
吉野家超うめーしユニクロ万歳ですよ。
GUのニットは超あったかいんですよ。
酔って公園で寝て連絡途絶えた挙句に逆ギレされても、目頭をおさえながらフーーーー…と息を吐いて怒りを鎮めながら会話するとか、一体どこのアスリートよ私は。
スポーツだ。
もはや夫との話し合いはスポーツ。
できることなら地区大会とか出場したい。
諸先輩方に蹴散らされて自分の小ささと世界の広さを知りたい。
「報連相をしっかりして」って夫に言うのも、もうやめたい。
「ゴミはゴミ箱に捨ててね」なんてのもうんざりだ。
夫と縄文時代の文明を比べるレベルまできた。
事は重大だ。
夫は決して頭は悪くない。
文明が止まっているのだ。
人の意見を聞き入れる部分が鎖国してる。
ペリーが来航しなきゃ開国しない。
私ならなれる。
彼のペリーに。
そんな甘いことを考えていた交際時代もあったが、半年で己の無力さに気付く。
今や彼のペリーどころかビリーだ。
スパルタが全てだと悟ったのだ。
それでも、ここ数年で一筋の希望の光が見えた。
ワンピースがワノ国編へ突入したのである。
長年鎖国していたワノ国が開国すれば事態は大騒ぎ。
きっと夫も「俺も開国しなきゃ!」と思ってくれるに違いない。
まあもし本当にそんな理由で開国したら、夫が寝ている間にワンピース全90巻を身体に乗せ、耳元で「私の数年の努力…」と囁きながら呪いたい。
夫とワンピースの今後の展開にご期待下さい!