三度の飯より飯が好き

大阪で日常的に繰り広げられるハイクオリティなボケとツッコミに怯えながら暮らす女の日記。

深夜、気付くと隣で芦田愛菜が寝てる

 

夫の寝言がすごい。

 

これを言うと大抵、奇声がすごいのかとか、会話できるレベルなのかとか、色々聞かれるんですけど、強いて言えば「全部」。

 

同棲して間もない頃、真夜中に原住民に叩き起こされたことがある。

静かに眠っているかと思いきや、突然よくわからない国の言葉を流暢に叫びだし、謎の「破ァーーーーーッ!」という喝と共に再び眠りにつく原住民。

あるときは突然「ハァ…ハァ…!」つって苦しみ始めたかと思えば、ガバッと起き上がりまっすぐ私の目を見て「愛してるよ…」って囁いて寝る。

あっ今夜はイタリア人?、ってくらい、夫の人格が毎晩変わる。

深夜に無理矢理目覚めさせられる身としてはかましいわ以外に何の感想もない。

さすがにこれを数年続けられたら慣れもする。

最近は夫がガバッと起き上がってきた瞬間に、間髪入れず「シャラップ!!」と叫びながら夫の頭を枕に押さえつけることで、寝言の内容に小一時間考えさせられることもなく、スムーズな眠りに就ける、というスキルを会得した私です。

流れるようなスピードというよりはもはや流れ作業。
さながらエクソシストの如く、何かに取り憑かれた夫を鎮めるのが日課になりました。 

そんな感じで、夫のレベルに合わせてこちらも成長せざるを得ない日々ですが、こちらが進化するということはあちらも進化するという、『BLEACHの法則』があるわけで。
若干定番化していた寝言も、徐々にこう、ひねりを入れてくるようになったわけです。

 

先日の話。 

深夜2時に横で夫がうなされ始めたので、眠りの浅い私は、ああくるな、って。
こちらも伊達にエクソシスト職人やっているわけではないので、悪霊の気配は稲川淳二よりもいち早く察知するわけですよ。

お、これはくるぞ、と。

それで案の定、ジャンプなら即打ち切り決定ってくらい何のひねりも面白みもなく、予想の展開通りに夫が勢い良く起き上がって来たので、集英社はそんなに甘くねえぞって気持ちも込めて、『次回作にご期待下さい』つって桜木花道よろしく夫の額にそっと左手を添えたところで、夫が食い気味に叫んだ。

 

「おれはね…!」

「ななこがね…!」

 

 

「だーいすきなんだよ!!」

 

 


おい……こいつ……

 

芦田愛菜に寄せてきよったぞ…

 

しかも芸能と学業を完璧に両立するかの天才少女ならまだしも、目の前に転がっているのは体重80キロを目前にした、酒に酔って公園で寝るダメなおっさん。
なにが悲しくて深夜2時に芦田愛菜に寄せるおっさんに叩き起こされなきゃいけないのか。

なぜだ。もっと他にいるんじゃないのか。

この罰を受けるべき重罪人が、この国には大勢。

 

わけのわからない寝言を、聴覚から脳まで検問なしでストレートに受け入れてしまったために、案の定、謎のイライラに苛まれるわけですが、なんせ相手は寝てる。

やめよう。考えるの。
彼も疲れてるんだ。

毎日毎日お仕事お疲れ、ありがとう。
おやすみ!

 

すっと眠りの体勢に入った私の横で、何の穢れもない澄んだ一言が聞こえた。

 

 

「 S e x ... 」

 

 

いや起きてんだろどう考えても起きてんだろ殴るよマジで殴るよ。つって強めの肩パンをしたが信じられないことに夫は熟睡していた。

その後、小一時間、私だけが妙に発音の良い「sex...」の言葉にうなされる。

 


もういやだこんな夜。